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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

「日本」講談社、1958(昭和33)年1月号~1961(昭和36)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 页

青空文庫

いいだろう。一つここらでご相談といきやしょうかね」

「都頭さん、なにか手前に」

「おおさ、九叔、白を切ると承知しねえぞ」

武松はふところへ手を突っ込んだ。かねて隠し持っていた薄刃作りの短剣がいきなり卓の厚板へぽんと突き立てられた。

「……?」

「九叔、なにもそうおれの顔をマジマジ見てるにゃ及ばねえよ。こいつに」と、その白刃を顎でさして「――こいつに向って返辞をする気で、嘘いつわりのねえとこを素直に白状してしまうがいい」

「ほほう。飛んだご挨拶ですね、都頭さん」

「そうよ、折角、あったかい酒を飲ませておいて、氷をぶッかけるような話だが、関り合いじゃ仕方もあるめえ。どっち道、美味い物食いをした後にゃ、腹くだしか腹痛は通り相場だ」

「へへへへ。都頭さんにも似合わねえ、妙に人の腹を勘ぐりなさる。それよりもなんでズバリと、兄の武大の死因を知っていないかと、事を割って、あッさり訊いては下さらないんでございますか」

「やっ。それじゃおめえも、兄の死因を」

「まあ都頭さん、気を落ちつけて、こいつをご覧なすって下さい」

ふところの包みを解いて、その上に彼が並べたのは、十両の銀子一錠と、焼け脆んだ人骨の一片で、その黒ずんだ灰白色の人骨はどこか紫ばんだ斑点をおびていた。