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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
丁度ポンプのところから(油しぼりの小屋のこっちの端)隣りの大工さんに土地が売られて居り、油しぼり小舎も大工さんのものです。今は麦の苅ったのと板とが薪木とつみこんである。
大工さんは、表の倉のところ、あの古い二階から風呂のあった小舎をこめて百坪ばかり1100で買って子供の小さいの二人と細君とで、一寸見るとキャンプ生活みたいな暮しかたをやっています。それでも菊を大変上手につくる由。今は朝顔の鉢が沢山あります、おじさまの御秘蔵であったシャボテンのこちゃこちゃした小さい鉢はやっぱり棚の上や庭にあります。
こちらの家は静かで落付いて、本当に仕事がしたい気になること。一寸、いつかゆっくり来て、ものを書いて、折々は海辺へでも出て見たいようですが、もう間もなく例の建造物が出来、人口は五万になるそうですから、迚もそんなしずかな空気はなくなるでしょう。うちの裏の一番はずれのすぐそばに十二間道路が出来るそうです。表は三尺とかへずられて八間通りになりますそうです。そして、自動車は柳井室積間を疾走し、新都市計画が実現されるわけです。野原の土地の買上げは終結して、お寺で調印したそうです。