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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
(壺井さんの例)景気が片よってよいのと、空襲をおそれて郊外分譲地はこの何年にもなかった売れようです。一反百円の着物(それも女もの)が大百貨店ではいくらも並んでいる。これも久しく見なかったこと。
さて、十日の午後のお手紙をありがとう。私がお会いしたあとお書きになったのらしいと思いました。
心配していただいてすみません。時あればユリが早寝早起きをするようになるだろうと、そのときがいかにも来たとしか考えられません。云われているとおり、今の条件で体を悪くしては何とも申しわけがない。これまでは、強ち耳をふさぐのではなくても、早ねしかねたこともありました。日曜の手紙でかたくお約束したとおり、最もおそくて十一時迄、早くてはもっと早くねることにします。当分の間は、夜は出来るだけ早くねて、ひるもちょいちょい横になることにします。体のこと、漠然としか書きませんでしたから、すこし溯って申します。
盲腸が折々つれたり、左脚の痛むの(これは内からの土産)がいやだから、七月二十日頃から凡一ヵ月ばかり、三共のモクソールという、お灸で発生する精分の薬の注射をやっていました。これは、副作用のないもので、永くつづけてよいのだが、注射をしてくれるSという看護婦のひとが旅行に出るので、八月二十日ぐらいでやめました。