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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
05 一九三八年(昭和十三年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 229,387 字 · 453 页
――○――
この手紙は、これで一区切りにしましょうね。そして別にきょうお話した、私のまわりについてすこし細かに書きます。自分の気持では、私たちの家として、ここにいらっしゃる生活のように感じていても、やっぱり書いた方が猶はっきりするところもある訳ですもの。
会いに出ていらっしゃるにも、くたびれが感じられますか? きょうチラリとうかがって心配になった。私のために、毎日、すこし無理なときも歩いていらっしゃるのではないでしょうか。そんなことがあるのではないかしら。あなたが動くのが大儀に感じられるような時まで歩かせなくては、朝起きさえも出来ない程ではないのだから、本当にどうなのでしょう。ぶりかえしの性質をもっていたら、又絶対安静がよいのではないでしょうか。一番わるいときにも、歩かせてしまったのだから、実際にはおそすぎた気配りですが。いつも安心するような返事しかなさらないものだから、つい、それでいいように思う。呉々お大事に。暖い秋日和で、机の上の黄菊が匂うこと。
こんな詰った字をお読みになるの、窮屈のようではないのかしら。
十月二十八日 〔巣鴨拘置所の顕治宛 目白より(封書)〕