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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

「どこへ行くんですか……だしぬけで、ちっともわからないんですけど……」

「いや、ご尤もです。しかし、ここでそれをお話しするわけには参りません。いわば私はただ使いなのでありまして、ある方から命令で、お迎えに上ったようなわけであります」

――おやおや、これはすこしへんな話になって来たぞ!――と、英夫は、心の中で思った。この客がどういう人間か――軍人らしいという想像だけはつくのだが、それにしても身分もはっきりわからないし、ある方の命令をうけて来たという。ある方というのは一体誰なのだろう。重大な用件というのは、どんなことなのか。また、迎えに来たというのだが、僕をどこへ連れて行こうというのだろう。いや、それはそのある方のいるところに違いない。すると、ある方というのは兄さんのことかしら、そうだ、そうかも知れない、いや、そうに違いない……。

「ある方って、兄さんのことですか?」

「いや、河井中尉殿ではありません。中尉殿の今おられるところをご存じないのですか?」

英夫はすこし紅くなった。兄の居所さえも知らないということが、恥かしかった。

「知りません」

すると、すこし気の毒そうに、