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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页
お勤めも不首尾になって、主家を浪人され、ひどく貧乏したらしいね」
「でも、よく、それが残っていましたね」
「うむ、例の小箱と、先生の研究だけは、代々園部家に伝わっていたのだ」
謙一は、トランクの中から、それを取り出して来た。
「これだ」
謙一の話とはちがって、真っ黒に煤けた、色どりなどもはげ落ちた木箱で、羊のなめし革も灰色にかわり、ところどころに虫くいが出来ていた。
そのほかに、もう一冊、これも煤けた、虫くいだらけの和綴の本が箱に入っていた。
「これが先生の残された記録だ、ボルネオ探険の鍵が、この中に書かれてあるのだ」
「えっ! この古本の中に!」
「どうして、この本が兄さんの手に入ったか、それも一と通り話そう……」
謙一がこの古文書を見つけだしたのは、祥子の家が、田舎へ引きあげる時だった。祥子の母――園部夫人が、安い値で、売り払おうとしたのを、その当時少尉に任官したばかりの謙一が譲ってもらったのだ。
「僕、ちっとも知りませんでしたよ」
「そりゃあそうだ、家においてなかったんだから……」
いくら語学の天才でも、古文は読めなかった。で、その方の学者の手許で翻訳してもらった。