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ひきょうのにちりんき

秘境の日輪旗

蘭 郁二郎

「秘境の日輪旗」少年文庫、新正堂、1942(昭和17)年9月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,829 字 · 169 页

青空文庫

海との戦い

海との戦い

船の中では、あれ以来、誰ひとり眠れなかった――。颱風のまっ唯中を、難航に難航をつづけながら、貴い皇軍の武器を死守しなければならなかったのだ。

船長はじめ、日本人の船員たちは、暴風という人間の敵以上の自然の強敵とたたかいながら、死んでも使命を果さなければならぬと思っていた。いや、自分たちは戦場で仆れる軍人のように仆れても、船を殺してはならぬと思っていた。

船長は、上甲板で叩き暴れる海を睨んだまま動かなかった。

おそるべき強敵――自然の強敵にも劣らない、おそるべき趙一味の陰謀も、英夫や、祥子や宮崎運転士の活躍で未然に防ぐことが出来た。

今は、この暴風圏を突破することにだけ全力を尽せばいいのだ。――船長は英夫たちに深く感謝しながら、悲壮な決心をかためていた。

時計爆弾の処分は、こんな中で、難作業だったが、細心の注意をはらって、海底に沈められ、爆発の危険からのがれることが出来た。

船艙につながれた趙一味の中でも宮崎運転士を襲った支那人たちは、船で趙に買収されたことがわかって、今は持場に働いていた。

ただ趙と王だけは、英夫と祥子が立会ってした船長や宮崎運転士の訊問にもやけくそな反抗を示すだけで、要領を得ない返事をくりかえしていた。