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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

秋の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 167,435 字 · 329 页

青空文庫

第二百六十六 料理の原則

こんな馬鹿気た事の罷まない内はとても我邦に衛生思想の発達する気支がない。実に困ったものさ」小山「それでは病人見舞に何を持って往ったらいいだろう」中川「先方の人物次第で病中の慰みになるような高潔の書籍とかあるいは西洋風に美しい花なぞを持って行くのが一番だね。しかし書物にも病人の慰藉にならずして悪い刺撃になるような淫猥なものが多いし、花にも梅だの罌粟だのというような人体に害するものあるからよほどその種類を選択しなければならんよ」

第二百六十六 料理の原則

小山「梅や罌粟はどういう訳で人体に害がある」中川「梅は実になると青酸という激薬を含む位だから花の時にもあの香気の中に強い興奮性を持っていて病人の枕元へ置くと頭痛を起したり不眠症を起したりするね。病人でなくとも梅の鉢を枕元へ置いて寝るのは衛生上に良くない。罌粟は無論阿片を取る位な魔酔性の者だから病人には悪いさ」小山「なるほどね、何でも人の身体に影響すべき色々な性質を持っているのだね。不眠症の人が玉葱の切ったのを枕元へ置くとよく眠られるというのも同じ事だ。物の性質を知っていないと色々な間違いを起すが殊に食物の性質を知らずして料理するほど危険な事はないね。