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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

炊事場ではなく、家族や内客や、諸商人、職人などの出入りするところで、客の多い家だから下足番を兼ねた小僧が一人、あがり端の六帖で小粒金や小判のはいった麻袋を、板の上で叩いていた。袋をあげては板へ落す、という単調でまのぬけた動作であるが、そうやっていると、微量の金が麻袋に付くので、一定の期間をおいて袋を焼けば、溜った金屑がとれるのだという。役人にみつかっては悪いから店ではやらないのだろうが、両替商ならどこでもすることだそうで、栄二はそれを聞いたとき、こんな大店のくせにけちなことをするものだと、ひどく軽蔑したものであった。

見本の紙の包みを持って、多市と二人、座敷へとおされると、十五、六になる中働きのおすえが茶と菓子を持って来た。――栄二は一昨年と去年はこの家へ来なかったが、三年まえまでは毎年来ていて、二人の娘たちとも親しかったし、おすえともよく知っていた。

「暫くね、栄さん」とおすえは多市に挨拶してから栄二を見た、「ずいぶん大きくなったじゃありませんか、あたし初めはちょっと見違えちゃったわ」

「よせよ」と云って多市が笑った、「可哀そうにこれでもはたちになったんだぜ」