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さぶ
さぶ
山本 周五郎
「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页
なにもかもおれの間違いだ、頼む、みんな勘弁してくれ。
与平の泣き叫ぶ声が、遠いかなたで聞えていた。他の男たちの喚き声も聞えたが、逆上したような与平の泣き声だけが、いつまでも続いているようであった。そのあいだに次々と石が取りのけられた。油部屋の者が駆けつけて来、こぶの清七がその強力にものをいわせたのだ。
「しっかりしろぶしゅう」と清七はどなり続けた、「気をおとしちゃだめだ、もうすぐだぞ、しっかりするんだぞ」
栄二はまた失神したが、それは短い時間だったらしい。水を吐かされて咳こみ、気がつくと仰向けに寝ていて、自分の口から出る激しい喘ぎが耳についた。
「そっとしてそっとして」と云う声がすぐ脇で聞えた、「動かすな、足の骨が折れてる」
医者だな、と栄二は思った。さんてつ先生とかいうほかには姓名もよくは知らなかった。中年の痩せた人で、眼つきのするどい顔だけは覚えがある、暴風で病人を運び出すときにはいなかったようだが、そういえば心学教師もこの医者も、殆んど無報酬でやっていると聞いた。いよいよおれが世話になる番か、などと栄二は思った。
「この骨折のほかに大きなけがはないようです」