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さぶ

さぶ

山本 周五郎

「週刊朝日」 1963(昭和38)年1月4日号~7月5日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 210,521 字 · 415 页

青空文庫

栄二は撞木杖を突いて、海端のほうへもっと近より、眼をそばめて、汐干狩をしている人たちを眺めやった。――崩れた石垣の下から救い出されたときのことが、そしてそれからあとの、みんなの心のこもった劬りと心遣いのことが、改めてなまなましく思いだされた。――おれを助けるために、あれだけの人数が逆上したようになり、おれを慰め励ますために、あれだけの人数がまわりに集まってくれた。

「これは人間どうしの絆だ」と栄二は口の中で囁いた、「この寄場とおれを結ぶ絆だ、この絆は簡単に切れるもんじゃないんだ」

「岡安さんは心配してた」と側へ歩みよりながらさぶが云った、「――いま栄ちゃんと同じ部屋に、たちの悪い男がはいってるって、その男はいまになにか間違いを起こすだろうし、栄ちゃんはそれを黙って見てはいないだろうって、だからそんなことにならないうちに、栄ちゃんをここから出したいんだって」

栄二は振り向いてさぶを見た、「岡安さんが本当にそう云ってたのか」

「ああ」とさぶは頷いた、「いま聞いて来たばかりなんだよ」

岡安さんはやっぱり知っていて、なにかを待っているんだ。なにを待ってるんだろう、やつらが暴れだすのをか、それならいますぐだっていい筈じゃないか、やつらは公然と禁制の博奕をやっているし、そのため幾人かの役人が買収され、もっこ部屋の中がめちゃめちゃ