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さんごくし

三国志

吉川 英治

06 孔明の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页

青空文庫

――太公望もその志に感じ、ついに文王を佐ける気になって、その功はやがて、周代八百年の基を開いたのである。――古人の賢人を敬うことは、みなこのようであった。思い見よ、汝自身の天性と学問を。――もし先方へ参って、今のような無礼を放言したら、玄徳の礼も、空しきものとなる。関羽一名を供にして行くから、汝は留守をしておるがいい」

云い捨てて、玄徳は早、城中から馬をすすめていた。

ひどく叱られて、張飛は、一時ふくれていたが、関羽も供についてゆくのを見ると、

「一日たりとも、家兄のそばを離れているのは、一日の不幸だ。おれも行く」

と、後から追いかけて、供のうちに加わった。

春は浅く、残んの雪に、まだ風は冷たかったが、清朗の空の下、道は快くはかどった。

やがて、臥龍の岡につく。

駒をおりて、玄徳は、歩行してすすむこと百歩、

「臥龍先生はご在宅か」と、慇懃、叩門して、内へ云った。

飄として、ひとりの書生が、奥から馳けてきて、門をひらいた。

「おお……」

相見れば、それはいつぞやの若者――諸葛均であった。

「ようこそ、お越しなされました」

「きょうは、お兄上には?」

「はい。昨日の暮れ方、家に帰って参りました」