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さんごくし
三国志
吉川 英治
06 孔明の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 161,356 字 · 323 页
「……わからん。……実にあのお方の心理はわからん」
閣上にとり残された諸臣はみな呆っ気にとられていたが、程※(「日/立」、第3水準1-85-21)、蔡陽の輩はわけても茫然、つぶやいていた。
× × ×
山はところどころ紅葉して、郊外の水や道には、翻々、枯葉が舞っていた。
赤兎馬はよく肥えていた。秋はまさに更けている。
「……はて。呼ぶものは誰か?」
関羽は、駒をとめた。
「……おおういっ」
という声――。秋風のあいだに。
「さては! 追手の勢」
関羽は、かねて期したることと、あわてもせず、すぐ二夫人の車のそばへ行った。
「扈従の人々。おのおのは御車をおして先へ落ちよ。関羽一人はここにあって路傍の妨げを取り除いたうえ、悠々と、後から参れば――」
と、二夫人を愕かさぬように、わざとことば柔らかにいって駒を返した。
遠くから彼を呼びながら馳けてきたのは、張遼であった。張遼はひっ返してくる関羽の姿を見ると、
「雲長。待ちたまえ」と、さらに駒を寄せた。
関羽はにこと笑って、
「わが字を呼ぶ人は、其許のほかにないと思っていたが、やはり其許であった。