轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页

青空文庫

実相の内に囲まれても、虚相の空に囚われても、悉く生きて帰ることはできないでしょう」

と、縷々述べた。

もちろん、こちらの口上に対する、謙信の返答も、ありのまま、それはその通り口写しに話した。

信玄は、沈黙して、終始、耳をかたむけていた。毛の生えている耳の穴のわきに一すじの血管が太く膨れていた。

日の没するまで、ここの陣中は何やら騒然としていた。それは妻女山の中軍とはまるで正反対なものであった。信玄のいる帷幕には、彼の一族と甲山の星将とが半日も鳩首して、その人々が入り代り立代り出はいりしていた。陣外の馬匹までが、ここでは実にやかましいほど、悍気を立てていなないている。

墨のような秋の夜が、また虫の音と星ばかりな天地を現じた。陣々から霧のような炊事のけむりが立ち昇ってから程なく武田方の旌旗は徐々うごき出した。千曲川の上流へ向ってである。もとより妻女山の敵はこれを凝視していると見なければならない。移動中の側面へ向って、いつ何時、対岸から弾丸の飛雨と騎兵隊の猛突が水けむりをあげて猛撃して来ないと計られない。その備えは充分に構えながら――、すこぶる危険な払い陣を敵の眼の下で行っているのだった。