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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页
(これもみな帰するところ、自分が越後に遁れて来たために生じたこと)
と、ひとり問い、ひとり責め、居ても立ってもいられないような心持になっていた。
ひとたびそういう自責を抱いてからは、耳元に鳴る鐘も、戦歿三千余魂が声をあげて、自分を責めるかと思われ、義清は生きている空もない心地だった。
実のところ、彼はすでに、林泉寺にいるうちに決意していた。剃髪して仏門に入ろう。そして争闘興亡の圏内から遁れ去ろう。同時にかつての栄門に還る夢望を捨て、一切の執着を洗い、上杉家の長い恩顧を謝して、飄乎、高野の塵外へかくれよう。
そうすれば、ふたたびこの大きな犠牲はなくなる。今までの償いには、ひたすら故人の冥福を祈って生涯する。沙門に入ってそれを詫びる。
「……かように思い決めたのでござりまする。今日まで、殆ど、この流寓の孤客を、お身内同様に思し召され、連年、多大の軍費と将士の尊い血を以て、義清を御庇護下された大恩は死しても忘れはいたしませぬ。が、これ以上、おびただしい人命を捨てさせ、遺る御家中の人々に嘆きをかけては、義清、いかにお詫びしてよいやら分りませぬ。また、ふたたび祖先の地へ還り得るとしても、独りの歓びとすることはできません。