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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页

青空文庫

当甲州は、強大無比と聞いていますが、たとえばどれほどな大きさでしょうか」

「国の広さは、南北八日路といわれています。大国の証拠には、日々、街道すじの往還、荷駄千匹ずつありと申す。以て、御推量がつくでしょう」

「はははは。それは意外」

「何をお笑いめさるか」

「でも、荷駄千匹の往来と御自慢あるが、越後においては、出入りの船、日々千艘。一艘の船には、馬千疋が負うほどの荷は積みます。してみると甲州は、存外な小国とみえますな」

曲淵は赤面して黙ってしまった。初鹿野伝右衛門が、それを救うように、

「下野殿。つかぬことを承るが、越後では他国へのお使いに、貴殿のような小男を、わざと選んでお出しになるのかな。失礼ながら、何尺おありになりますか」

下野は、少しも動ぜずに、すぐこう答えた。

「わが越後では、使者を他国へ向ける場合、先が大国なれば大なる男を、先が小国なれば小なる男をつかわすことが例になっています。たとえば、貴国へはそれがしのような小男を遣わされたように」

二の句も出ずに、伝右衛門が口をとじていると、下野はなお、

「身長をおたずねでござったが、こう見えましても、それがしは五尺にわずか一寸ぐらいしか不足ではござらぬ。