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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
「週刊朝日」1942(昭和17)年1月4日号~5月24日号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 页
且つは五臓の患ひとなる。
一 大食は、卑劣の至りなり。小我の快楽に過ぎず。家来朋友と程々に楽しむを以つて最なるものとし、独味飽慾はいやしむべし。
一 総じて、飲食の事、能々つゝしむべき也。もし病まば一朝の戦陣に恥あり。もし命を落さば、忠孝二道にそむく。世々までのものわらひ、家門の名折れ、合戦の場において功なきにも劣る。
これは藩士一般への上杉家家訓の一節にすぎないが、謙信はなお、帷幕の上将の名を連らねて、
不識庵家中日用修身巻
という一種の「武士道訓」を藩の子弟たちへ示していた。
一生の務、今日の事
という初めには、
一 暁起、手水仕るべきこと。
神祖、仏拝の礼、勿論のこと。
一 やしき一巡見廻り、男は、髪を早く結ぶが第一也。食事調菜、二種を過ぐべからず。
一 厩は毎日、用なくとも、見まはり欠かざること。
一 わが家にあるは、みなわが子と思へ。慈悲、仁心、刀に打粉いたすが如くせよ。
一 夜は、わが愛子たりとも、わが側に寝かすな。床衾奉公人はあたゝかに、わが子は寒きにおけ。
――というような日常衣食住の細目から公職、交友、音信、遊楽のことまでわたっているが、とりわけ武士としての修身修養には、謙信の方針としてこう訓えている。