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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
燕子花さく八橋も、渡れば渡る渡りがね、そこへ後から追って来た、業平朝臣の狩衣や、オーイ、オーイと呼びかける」
一向意味がわからない。しかし大変面白い。箱から取りあげた文屋人形、ヒョイと地へ置いた老傀儡師三尺ばかりさがったが、片手で膝を打ちながら、なお口上を続けてゆく。
「ヤンレあわれな文屋殿、そこで手をすり申すには、お許しくだされ業平さん、京は祇園会不動尊、八幡様へ願かけて、おたのみ申す小町様、どうぞ私へくださりませ。いやいやいやと首を振る、業平さんのいうことに、それはいけめえ文屋さん天神様へ誓っても、小町ばかりは譲れねえ。これを聞いたる文屋さん、さりとはさりとは気が強い、悪でござんす業平さん、わちきと小町の馴れ染めは、そも十月の神無月、野分芭蕉に秋深く、きぬうつ音も消えがての、御所のお庭は葉鶏頭、そこの廊下の真ん中で、オットドッコイおれがいう、おれと小町の馴れ初めは、清明の日の高殿で。花吹雪する真っ昼間、小町の方でほれたので、おれの方でもほれてやり、かむりの笄落としたが、どうでも小町はいい女、柳の五衣に緋の袴、檜扇持ったとりなりは、官女官女官女だア……」