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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
「お遊びお遊び、歌ってね。お前にはそれが一番似合う。山の小鳥さん、お日様の子。なんにも心配することはないよ」
だが恐ろしい大敵が、襲って来るということだけは、間もなく君尾にもわかるようになった。
さてある日のことである。三吉猿を引き連れて、君尾は盆地をのぼって行った。のぼり切ったところに草原がある。灌木、微風、野花、小鳥、陽は明るく空気はにおい、大変心地よい草原である。
「さあさあ三吉、鬼ゴッコだよ。とらえてごらん、さあわたしを」例によって鬼ゴッコをやり出した。
スーッと君尾が走ってゆく。とその後から三吉猿、今日は手拭いで頬かむりをし、後足で立って追っかけてゆく。
だがなかなか捉えられない。しかしいったいどうしたのだろう? 猿は敏捷なけものだのに、いかに素早く走るとはいえ、娘の君尾をとらえられないとは? いやそれにはわけがある。つまり、君尾がひどく不機嫌になり、ピチャピチャ三吉をたたくからである。女の繊手というものは、どうしてどうして馬鹿にはならない。これでたたかれると随分痛い。三吉といえども痛いのはいやだ。で、利口に立ち働き、わざと捉えようとしないのである。