轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

という声が突っ走った。同時に一つの黒い影、もろにうしろへ飛びしさったがヒューッと何か投げつけた。と、もうその時にはその人影、河とは反対、耕地の方へ投げられた石のように走っていた。眼にもとまらぬ早業で、しかも綽々たる余裕がなければ、到底出来ない芸当である。

と、初めて、「待て!」という声が広太郎の口からほとばしった。時のハズミで出た声で、真に呼び止めた声ではない。その証拠には追おうともしない。追わないばかりかグタグタと、大地へ坐ってあぐらをかいた。ホーッともらす太い息、と、ガチャンと刀を捨てて、ピッタリ両手を突いたものである。

「天下は広大。えらい奴がいるなあ」まずもらしたものである。「柳生の極意甲割り、死に物狂いで下ろした太刀が、幸いきまって敵の刀をつばのきわから、折ったればこそ、運よく命は助かったものの、そうでなかったらやられたところだ。……うむ」といって考え込んだ。「どうもわからない、何者だろう?」またそこで考えこんだ。「剣道名誉の武士にしては、少しく態度が無頼に過ぎる。といって市井の無頼漢にしては、余りに腕が利いている。……胆の据え方、機のつかみ方、とてもとても常人ではない。