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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
立派な立派な若殿様。お前の息子の文三なんか、束になったって追ッつきはしない。証拠があるのさ、いい証拠がね。悪人か善人かすぐかぎ出す三吉猿がなついたじゃアないか」
「ほほう」というと楠右衛門、金網窓へ半面を向け、槍の穂先をとぎ出したが、「三吉猿がなつくようなら、なるほど悪人じゃアなさそうですね。……文三、こいつは馬鹿でごわす」
するとさっきからそのそばで、弓弦を張っていた当の文三、テレまいことか、頬をふくらませフッと横を向いたものである。
「アッハッハッ」と杉窪の銅兵衛、とりなすように笑い出した。「どうも相変わらず口が悪い。が、こいつも育ちのためさ。素姓は途方もなくいいのだが。……それはそうとそのおさむらいさん、姓名を名乗りはしなかったかな?」
「姓は袴、名は広太郎。こうおっしゃってございますの」
「えッ」というと杉窪銅兵衛、持っていた種ヶ島をほうり出し、何かにさされでもしたように飛び上がった。
「袴広太郎! ううむ、袴! や、えらい人がおいでになった!」
「爺つぁんおめえ知ってるのか?」けげんそうに楠右衛門が声をかけた。
「知ってる段かい、大知りだ! 立派な人物! いい味方だ!」