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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
自分より自分のことを知っている。いったいどうしたというのだろう? ぼう然とならざるを得なかった。それを見て取った杉窪銅兵衛、にわかに調子をおとしたが、
「いやナニ、これには理由がござる。非常に簡単な理由がな。一口に申せば隅田において、島原城之介と斬り合われて以来、拙者不断に貴殿の身辺を、つけ廻して研究いたしましたのでござる」ここでニッコリ微笑したが、にわかに穏やかな顔となり、好々爺のおもかげさえ現わした。
「しかし」というとキッとなった。「決してご貴殿お一人を、つけ廻していたのではございませぬ。天草時行、島原城之介、イスラエルのお町、由井正雪、すなわち巻軸に関係ある、あらゆる人達の身辺を、つけ廻していたのでございますよ。さてその理由は……」とここでまた、やさしい顔に一変したが、「その巻軸を拙者の手に、奪い取ろうがためでござった。……そうして幸いにも巻軸は、今や拙者の手中にござる。しかるに……」というと銅兵衛の顔、恐怖の情を現わした。と、ゴックリとつばを飲む。「しかるに天草時行一味、近日大挙してここへせめ込み、巻軸を奪い返そうといたす! きゃつ極悪、佞奸の人物。