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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
なんにでも頭をさげちゃアいけねえ。さげたとたんに退治られる。神様なんかにさえ退治られる奴らだ。松平伊豆にかなうものか。松平伊豆ときた日には、神様へ塩を振りかけて、取って食おうというえら者だからなあ。術数権謀の化け物だよ。ああいう奴こそ人間だよ。……で、おれは見切りをつけ、原の城から抜け出したってものさ。入城したから退城した。ちっとも不思議はないじゃアないか。はいったが最後、出られねえような奴は、とても浮世では出世しないなあ」
すると築土は微笑したが、「その砌たしか天草殿には、巻軸をお持ち出しなされた由で」
「オイオイ築土、何をいう。持ち出したなんて、人聞きが悪い。ふんだくって来たとこういいねえ。すべて物事というものは、下等な言葉でいうがいい。万事その方がいきいきしてみえる。上品な言葉を使ったが最後、物事精彩を失ってしまう。……そうだよ巻軸をふんだくって来たよ。ところがどうも驚いたことには、おれより一層素早い奴があって、いつの間にか一本持ち出してしまった。二本の巻軸を合わせないことには、秘密の糸口はわからないんだからなあ。これにはおれも参ってしまったよ」