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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

そのつきあたりに別棟があり、コロンコロンというかすかな音が、たまでもころばすように聞こえてきた。

「どうやら人間がいるらしい」心でつぶやくと早引忠三、大胆にもそっちへはって行った。ふすまがピッタリとしめられている。ふすまの奥は空部屋で、そのまた奥に部屋があり、そこに人がいるらしい。「かまうものか、押し込んでやれ」益※(二の字点、1-2-22)大胆になった早引忠三、ソロソロとふすまを引きあけた。思ったとおり空部屋で、その向こうに部屋があり、さかいのふすまが閉じられていた。

「将軍塚と申すので、南北朝時代の武将などの、遺物があると思いましたところ、曲玉管玉が出ようとは、ちと意外でございましたなあ」こういう声が聞こえてきた。老人の声で威厳がある。だが不思議にも言葉の音が、純粋の日本の音でない。

「はてな?」と忠三首をかしげた。「異国の人間に相違ない」

その時別の声が聞こえて来た。「不遇な楠氏の末胤でも、葬られているかと存じましたところ、いかにも先生の仰せられるとおり、神代遺物が出て来ようとは、いささか意外でございました」それは少年の声であった。いかにも清らかで美しい。