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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「おだてるねえ」と睨みつけ、「どうだろう権十、おれのつら、このごろトンマに見えねえかな?」

「どう致しまして、聡明で」

「ふふん、駄目だよ、財布はしめたよ。どだい根性が太すぎらあ。おれをおだててしぼろうなんて。トンマだといえ! トンマだといえ!」にわかにしんみりと考え込んでしまった。「トンマな忠三も可哀そうだが、イスラエルのあねごも可哀そうだ。ああも袴様にほれてしまっちゃアな。ほんとに変ればかわるものだ。昔のおもかげってありゃアしない。何が浮世で困るかといって、ふやけた悪党ほど困るものはねえ。それにさ袴という人が、取ッつき場のねえ性質でな。あねごを可愛がっているかと思うと、お助け致す、君尾殿! などと寝言をいうそうだ。……さアて、ところでその君尾、いよいよ目つかってしまったんだが、この納まりはどうつくだろう? あねごをすてて袴様、君尾という娘を取るかしら? うんにゃ、そんな事は義理にも出来ねえ。あねごは命の恩人じゃアねえか! 捨ててみやがれおれが承知しねえ! しかしどうでも捨てるとなると、あねごはいったいどうするだろう。仕方がないというところで、袴様をあきらめて、忠公一緒になろうじゃアねえか! こう来ねえとも限らねえ。