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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「おあきらめなすったのではございますまいか?」

お町追っかけてきいたものである。

「それもあるようでございますね」ひとの噂でもするようである。

「ほんとにそれに致しましても、どうして目つからないのでございましょう」お町の方が熱心である。

「この世にいないのかもしれません」やはり広太郎水のようだ。

「忠三さんをはじめとし、沢山の人を手分けして、杉窪からかけて江戸一帯、近郷近在までさがしたのに、どうしてもお行方が知れないとは」

「この世にいないからでございましょう」

「お気の毒な娘さんでございます」

君尾の噂をしているのであった。

「あのそれからお京様の方も、お行方が知れないそうでございますね」探るようにお町がきく。

「そんな評判でございます」広太郎少しも動じない。

「ほんとに不思議でございますわね」むしろ自分へいったのである。

「若い娘ごが二人まで、行方不明になるなんて」

広太郎なんとも返辞をしない。依然水のようにすんでいる。

柱につるされた籠の中で、鸚鵡が煎餅を食べている。その籠の下に眠っているのは、スペイン猫のネロである。

コツコツコツ、コツコツコツ、鸚鵡が煎餅をつつく音! ふと広太郎がつぶやいた。