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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
その後から一百人、みんな愉快そうに話している。大変行動が自由である。秋は半ばに近づいていた。木々が黄葉を呈している。そこへ昼の陽があたっている。白々と見えるは白樺の幹だ。林では兎がはねている。こずえでは橿鳥が呼んでいる。空気には立派なにおいがある。風のかげんで川の音が聞こえる。
そこをタッタッと走って行く。時々野馬が顔を出す。ヒョッコリ熊が現われる。獣の方でも驚かない。木地師の方でも驚かない。両者はまったく親類だからである。
この光景は本当にいい!
とはいえ木地師達はなまけ者ではなかった。抜け目なくかれらは仕事をした。ヒョイと一人が列から離れ、林の中へ飛んでゆく。鎌を振るって木の幹を削る。と飛び返って列へはいる。とまた一人が列から飛び出し、林の中へ走って行く。鎌を振るって木の幹を削る。と飛び返って列へはいる。とまた一人が同じことをやる。とまた一人が同じことをやる。一百人の同勢が、かわるがわるやるのである。
そのつどかれらは話し合う。
「あいつの木目は波だろう」「あいつの木目は玉に相違ない」「おれの目つけたのは雲に相違ない」
「いい栃だった。素敵な盆が出来る」