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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
――で自然、杣夫や村人は、湛慶滝へ近寄ることを、ひどく恐れ憚かるようになった。もっとも一方木地師の連中が、そういう杣夫や村人達が、滝の付近へ近寄ることを、なんとなく嫌って制するからでもあった。いやむしろそれはこういった方がいい。木地師の連中が言葉を設け、杣夫や村人を制肘し、湛慶滝の方へ近寄せまいとするので、それで一層杣夫や村人が、湛慶滝と紅毛人とを、恐ろしいものに値うちづけ、いろいろ取り沙汰をするのであると。
だが決して杣夫や村人達は、そのため木地師を嫌わないばかりか、かえって尊敬し親しくさえした。というのは木地師の生活方が、杣夫や村人よりも万事万端、進んでもおれば立派だからでもあった。「木地師ではなくておさむらいさんのようだ」これがかれらの評語であった。
だがもう一つ紅毛人について、驚くべき一つの噂があった。一人で住んでいるのではなく、この世の人間とは想われないほどに、気高い美しいお稚子さんと、一緒に住んでいるという噂なのであった。
「あれはね、満月の晩でしたよ。仕事の都合で遅くなり、気味が悪いとは思いましたが、湛慶滝のそばを通りますとね、滝の中からあのお方が、現われて来たではありませんか、ええそうです。