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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

ところが皆さん来ませんでした。そこで私達も行きませんでした。ナーニあなた行ったところで、本当につき合ってくれるものですか。半分しかつき合っちゃアくれませんよ。それもさ、ホンのお道楽でね」

またもクックッと笑ったが、ヒョイと立ち上がると歌い出した。

※(歌記号、1-3-28)低いところがようござるウ――

また鼻唄、またブラブラ、将右衛門工場を歩き出した。

卓によったまま広太郎、黙然として考えていた。「杉窪の里の大乱闘、傾城塚の愛欲地獄、そうしてここの木地師たちのくらし! おれも色々の経験をしたなあ。だがいったいどの経験が、本当の浮世のすがたなんだろう」

※(歌記号、1-3-28)低いところがようござるウ――

将右衛門の鼻唄が聞こえてくる。

「なにそうばかりもいわれるものか。高いところにだっていいことはあるさ」

その時あわただしく一人の木地師が、戸口から工場へ飛び込んで来た。「お頭、変てこでございますよ! なみのカワトじゃアありませんよ!」

「何?」と将右衛門突っ立ったが、これから大事件が起こったのである。

不思議なカワト

注進に来たのは佐太郎という木地師で、セカセカとして述べ立てた。