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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

そうして頭上遙かの空から、ほのかにさして来る星の光、それが後脳を輪取っている。「すてられた松明!」とつぶやいた。「誰がいったい捨てたんだろう? ……誰か捨てたに相違ない。……淋しい火だなあ、陰気な火だ。……高原の中にポッツリと、ぬしもなくひとりで燃えている。……今に自然と消えてしまうであろう。……自滅! 自滅! 自滅! 自滅! ……」衰え果てた声である。むせんでいるような声である。「おれだってすぐにも自滅しよう。……もう一突き、もう一突き、誰かうしろから突いてくれたら! ……道場はこわされ、財宝は奪われ、おれは自信を失ってしまった。それに」とつぶやくと眼を据えた。「お町を手に入れる力さえない」くちびるがブルブルふるえ出した。手もふるえているのだろう、カラカラカラカラと音がする。鉄杖についている環である。「お町、お町、あのお町さえ、手に入れることが出来たなら、自信を取り返すことが出来るんだが。……そうだ必死に愛している、その一物さえ手に入れられたらなあ。……だがなんとおれはお町のために、後手ばかり食わされているのだろう。いつもいつも追っかけてばかりいる。