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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
失しゃアがれ、消えてなくなれと! そこであっしがショボショボと、山をくだるの一段となる。どう考えたって下の役だ!」ここで忠三手をうった。「あねご、行きやしょう。城之介を追って!」
「どうしたんだい、性急に?」
「フッ、フッ、フッ、まずこうだ。あの魂のぬけがらを、追っかけているその間は、袴様とは逢われねえ。と少なくともそのうちじゅうは、あねごと一緒にいられるってものだ。へいさようで、二人きりでね。いいなあいいなあ、行きやしょう」
「忠さん」とお町、気の毒そうに、「そんなに妾といたいのかい?」
「あねご!」とあぶなくシンミリとしたが、すぐにまぜっ返したものである。「なんのアタボウ、背負っちゃアいけません。恋の燃えがら、もえ残り。いらねえいらねえ、いりませんねえ。だが」というと横目で見た。「くださるものならもらいますぜ。もっともさっきも二、三度いった」
忠三スタスタ歩き出した。それにつづいてお町が行く。あとに残ったは捨てられた松明、ボッと焔が立っている。暁近い高原の夜を、くさび形に割って燃えている。と一匹明かりを慕い、こおろぎがポンと飛んで来たが、すぐに羽根を焼かれ、まるくかたまって死んでしまった。