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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

ほかに二人が前駆けの体で、松明を捧げて歩いて行く。

「鉄杖の音でございますな。何か不吉の前兆でも、先生にはお感じなさいましたので?」こうきいたのは光圀である。

「さよう」というと朱舜水、雪白のあごひげをしごいたが、

「不快な音色でございましたよ。爪拗音というやつでな、不安と焦燥とがこもっております。鉄杖の持ち主何者か、すぐにも不幸の結果を見ましょう。……器は持つ人の精神によって、いろいろの音色を発しますもので。清浄の山伏が貝を吹けば、霧さえ左右へ開くほどで」

「これはごもっともに存じます」

一行悠々と歩いて行く。先を歩いている君尾の一群れ、そこから笑い声が聞こえてきた。君尾の笑い声が一番高い。そうして一番愉快そうである。ふと朱舜水は微笑した。

「君尾殿には元気のよいことで」

「七、八歳の娘のようで」光圀も微笑したものである。「朝日奈、朝日奈」と呼びかけた。

「は?」というと朝日奈小弥太、愛嬌のあるまる顔を、光圀の方へ振り向けた。

「そちが探った君尾殿の素姓、だいたい間違いはあるまいな?」

「はい、間違いはございません」

「銅兵衛という杉窪の長、それの養女だとかいうのだな」