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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
で貴公がばかものなら、よろしい、よろしい、ウンと考えろ! が、もし利口でいたかったら、休まずズンズン打つがいい。……ええとそれからさっきもいった、勝ってはいけない、勝ってはいけない。勝つのはおれだ、心得ていてくれ。……さあさあさあ貴公負けるように打て」また肩肱をウンと張り、プーッと酒臭い息を吐き、グッと盤面をにらみつけた。
むかい合っている奥村八左衛門、本来下戸で一滴も飲まない。酒の匂いさえ嫌いである。忠弥の息が顔へかかる。胸が悪くてムカムカする。で、むずかしく渋面をつくり、時々顔を横へそむける。
「なんてだらしがないんだろう。宝蔵院の槍を取ったら、日本一の手利きか知らないが、酔っぱらうと日本一のばかになる。よしよし思うさま負かしてやれ。それ! ……」というとハの四の位置、そこへピタリと石を置いた。
「驚かねえよ」と丸橋忠弥、少し真面目に置いた石は、タの十五という位置である。
「少し正気になったらしい」こう思った八左衛門、タの十七へ石を置いた。
「よし、来やがれ」と丸橋忠弥、レの十七へ石を置いた。
「真剣になってきたらしい」こう考えた八左衛門、レの十八へ石を置いた。