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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
篝がドカドカと燃えている。それに照らされた正雪と時行、かなりおかしげな対照である。ぶっ裂き羽織に裾縁野袴。そのよそおいは同じであるが、正雪は白面端麗な容貌、総髪を肩に波立たせ、そり身に威儀をつくろっている。時行となると髪は茶筅、しかも半分白髪である。握りこぶしほどの小さな顔、みつ口で無数にしわがある。態度はといえばせむしのように、背をこごめてのぞき込んでいる。
公平に照らしている篝の火が、かえって不公平に思われるほど、二人の姿は似ていない。
「それはそれとして正雪殿」天草時行ささやき出した。「敵を前にしての無礼講、拙者これには感心しております」
「これには訳のあることでな。あえて敵勢をあなどるのでもなく、また、大胆をてらうのでもござらぬ」
「それは承知で」と天草時行、貧弱にへこんでいる胸を打った。「人物試験をなされている筈で」
「見抜かれましたな。その通りでござる」
正雪くちびるをほころばせたがにわかにグーッと首をさげた。「巻軸二本を泉水へ投げた、紀州大納言家のお振る舞い、天草殿にはなんと思われるな?」そういった声の不安そうなことは!
紀州家の心
正雪にきかれて天草時行、音の響きに応ずるように、即座に答えたものである。