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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

「貴殿こそ!」

大変仲がよいのである。

顔見合わせて微妙に笑った。

「そこで一ぱい」と正雪がさした。

杯を受けて――グッと飲み、「返ぱい」といって時行がさした。

二人快く酔ったらしい。

「そこで話を元へ戻し」時行一層小声となった。「敵前においての無礼講、人物試験は気に入った催し。ところで結果はいかがかな?」

「さればさ」と正雪あたりを見た。「各自の個性見て取れました」

「で、ことごとくたのみある武士で?」

「まずその辺。……貴殿においては?」

「拙者の見どころ、いささか違う」

「お聞かせくだされ」と顔を沈めた。

「一徹短慮の丸橋氏と、女性的性質の奥村氏、二人を斬ってお捨てなされ」

「それは不仁、なりますまい」

「やむをえませぬ。下世話の金言、もう一つお聞かせいたしましょう。千丈の堤も蟻の一穴……」

その時であった。陣幕の外から、「松明が見える! こっちへ来る!」呼び立てる二、三人の声がした。

「横へそれた。上流へ行く! 湛慶滝の方へ行くんだろう」――朱舜水一行の松明らしい。次第に夜が明け始めた。

亡霊

往々例外はあるにしても、悪人の最期というようなものは、どうやら案外もろいものらしい。