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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
光圀微笑をしたものである。
「そうであろうな」と紀州頼宣、これも微笑を浮かべたが、グルリと君尾の方へ膝を向けた。
「済まなかったな、苦労をさせて」
「はい。……いいえ」と君尾はいった。つつましく両手は揃えたが、明るい心の彼女である。苦労した様子などは見えなかった。「いつも楽しゅうございました」――といった様子である。
「さて」と改めて光圀が、頼宣へ話をしかけた時には、すでに君尾は座にいなかった。侍女たちにかしずかれて別の部屋で、もてなしを受けていたのである。「少年の私、伯父上に対し、このようなことを申し上ぐるは、差し出がましゅうはございまするが、特にご免をこうむりまして……」
「ははあ」と頼宣トボケた顔で、「どんなことかな? 話すがいい。いやいや光殿は年こそ子供、が心は立派な大人。遠慮はいらない、お話しなされ」
「大猷院様にもご薨去のみぎり、天下なんとなく騒がしく、人心恟々のおりからでござれば、なにとぞ伯父上におかれましても、由縁の知れぬ浪人など」
「ああ正雪、丸橋の徒か」
「あまりお近づけ遊ばさぬよう」
「よろしい!」と潔く引き受けてしまった。「わしもな」とそれからいい出した。