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けんきょうじゅなん

剣侠受難

国枝 史郎

「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页

青空文庫

ああ優秀なるバンパイヤ! さすがの広太郎も圧迫を覚え、じっと立ちすくんだものである。

「だが大丈夫だ。この女なら! どんなことでもかなえてくれよう」

同時に心の片隅では、安心を覚えたものである。

しかしはたして広太郎にとり、イスラエルのお町と逢ったことは、そんなにも幸福なことだったろうか?

しんと更けた浅草界隈、店々は閉ざされ燈火は消え、通る人さえまばらである。と、スタスタと一つの人影、象潟町の方角から、碁盤目小路の方へやって来た。ふと迷い込んだ碁盤目小路、さあ早速には出られない。行っても行っても小路である。行っても行っても四辻である。鳥の巣のような小さな家、それがビッシリ並んでいる。「これは困った」とつぶやいた。それは袴広太郎であった。南蛮屋からの帰りであろう。

一つの辻をまがったとたん、「参るぞ!」という声がした。同時に人影、黒々とおどり、サッと太刀風が頬にふれた。飛びしさった広太郎、家の外壁へ背をつけた。

「これ、何者だ。人違いをするな。拙者は旗本、袴広太郎。怨みを受ける覚えはない!」

柄は握ったがまだ抜かない。暗中の敵を睨みつけた。

「ふふん」