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けんきょうじゅなん
剣侠受難
国枝 史郎
「東京日日新聞」1926(大正15)年5月28日~11月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,479 字 · 394 页
本郷を抜けて下谷へ入り、それから浅草洗足町、碁盤目小路を上手に抜け、象潟町へ踏み入った。南蛮屋の前へ立つ時、あくどく笑ったものである。そこでまたジャランと鉄杖を鳴らし、スーッと中へ消え込んだ。
よい天気、日がさして来た。堂のいらかが光っている。
と南蛮屋の門口から、一人の小男がすべり出た。ほかでもない早引の忠三、ひどく機嫌が悪いとみえ、口小言をいいながら走り出した。
「やりきれねえな、あのあねごには」これが最初の口小言である。
「袴が広いという奴に、とうとうとろけてしまやアがった。口をすくしてたのんでも、おいらのいうことはきいてくれず、そこへあいつがやって来て、一口たのむとすぐ承知だ。よろしゅうござんすというところで、パーッと鸚鵡をトッ放す。すると城之介が帰って来て、ヘラヘラ変てこに笑ったかと思うと鉄杖の中から巻軸を出し、うやうやしく献上する。この辺までは結構だが、どうもそのあとが面白くねえ。せっかく奪った巻軸を、天草へ返せというのだからなあ。あッ、痛え! この野郎! どいつだおれにぶつかったのは! オヤオヤオヤ、公孫樹の木か! 申しわけねえ、おれの方が悪い」