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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
で、多分御存じだろうが、僕は度々初代さんの家の附近をうろついて、近所の人の話などを聞廻ったのです。そして、ふと気がついたのは、事件の後、例の古道具屋から、何か品物が持出されなかったか。商売柄、店先には色々な品物も陳列してある。その内何か持出されたものはないかと云うことです。そこで、調べて見ると、事件の発見された朝、警察の取調べなどでゴタゴタしている最中に、ここにあるこれと一対の花瓶ですね、あれを買って行った者があることが分った。その外には何も大きな品物は売れていない。僕はこの花瓶が怪しいと睨んだのです」
「深山木さんも、同じことを云いましたよ。だが、その意味が僕には少しも分らないのです」
私は思わず口をはさんだ。
「左様、僕にも分らなんだ。併し、何となく疑わしい気がしたのです。何故かと云うと、その花瓶は、丁度事件の前夜、一人の客が来て代金を払い、品物はちゃんと風呂敷包みにして帰り、次の朝使いの者が取りに来て担いで行ったというのが、時間的にうまく一致している。何か意味がありそうです」
「まさか、花瓶の中に犯人が隠れていた訳じゃありますまいね」
「イヤ、所が意外にも、あの中に人が隠れていたと想像すべき理由があるのです」