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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
「チョコレートの欲しい様な、あどけない幼児が、どうして罪もない大人を、しかも二人まで殺すことが出来たのでしょう。お菓子と殺人との対照が余り滑稽じゃありませんか。この犯罪に現われた極度の残忍性、綿密な用意、すばらしい機智、犯行のすぐれた正確さなどを、どうしてそんな小さな子供に求めることが出来ましょう。あなたのお考えは余りうがち過ぎた邪推ではないでしょうか」
「それは、子供自身がこの殺人の計画者であったと考えるから変なのです。この犯罪は勿論子供の考え出したことではなく、その背後に別の意志がひそんでいる。本当の悪魔が隠れている。子供はただ、よく仕込まれた自動機械に過ぎないのです。何という奇抜な、併し身の毛もよ立つ思いつきでしょう。十歳の子供が下手人だとは、誰も気がつかぬし、仮令分った所で大人の様な刑罰を受けることはない。丁度、かっ払いの親分が、いたいけな少年を手先に使うのと、同じ思いつきを極度に押拡めたものと云えましょう。それに子供だからこそ、花瓶の中へ隠して安全に担ぎ出すことも出来たし、用心深い深山木氏を油断させることも出来たのです。いくら教え込まれたにしろ、チョコレートに執着する様な無邪気な子供に、果して人が殺されるかと云うかも知れぬが、児童研究者は、子供というものは、案外にも、大人に比べて非常に残忍性を持っ