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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

ていることを知っています。蛙の生皮をはいだり、蛇を半殺しにして喜ぶのは大人の同感し得ない子供特有の趣味です。そして、この殺生には全然何の理由もないのです。進化論者の解説に従うと子供は、人類の原始時代を象徴していて、大人より野蛮で残忍なものです。そういう子供を、自動殺人機械に選んだ蔭の犯人の悪智恵には実に驚くじゃありませんか。君は十歳やそこいらの子供を、如何に訓練したところで、か程まで巧みな殺人者に仕上げることは不可能だと考えているかも知れない。なる程、非常に難しいことです。子供は全く物音を立てぬ様に縁の下をくぐり、上げ板から初代さんの部屋に忍込み、相手が叫び声を立てる暇もない程手早く、しかも正確に彼女の心臓を刺し、再び、道具屋に戻って、一晩中、花瓶の中で、窮屈な思いに耐えなければならなかった。又海岸では、三人の見知らぬ子供と戯れながら、その子供等に少しも気づかれぬ間に、砂の中の深山木氏を刺殺さなければならなかった。十歳の子供に、果してこの難事が為しとげられたであろうか。又、仮令為しとげたにしても、あとで誰にも悟られぬ様に、固く秘密を守ることが出来たであろうか。