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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
そして実際同じ年頃の子供を連れて来て、試して見さえした。すると、予想の通り、その子供にはうまく這入れなんだが、子供の身体の容積と、壺の容積とを比べて見ると、若し子供がゴムみたいに自由になる物質だとしたら、充分這入れることが確められた。ただ人間の手足や胴体が、ゴムみたいに自由に押曲げられぬ為に完全に隠れてしまうことが出来ぬのです。そして、子供が色々にやっているのを見ている内に、僕は妙なことを聯想した。それはずっと前に、誰かから聞いた話なんですが、牢破りの名人と云うものがあって、頭だけ出し入れする隙間さえあれば、身体を色々に曲げて、無論それには特別の秘術があるらしいのだが、とも角もその穴から全身抜け出すことが出来るのだ相です。そんなことが出来るものとすれば、この花瓶の口は、十歳の子供の頭よりは大きいのだし、中の容積も充分あるのだから、ある種の子供にはこの中へ隠れてしまうことも、全く不可能ではあるまいと考えた。では、どんな種類の子供にそれが出来るかと云うと、直ちに聯想するのは、小さい時から毎日酢を飲ませられて、身体の節々が、水母みたいに自由自在になっている、軽業師の子供です。