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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

軽業師と云えば、妙にこの事件と一致する曲芸がある。それはね、足芸で、足の上に大きな壺をのせ、その中へ子供を入れて、クルクル廻す芸当です。見たことがありましょう。あの壺の中へ這入る子供は、壺の中で、色々に身体を曲げて、まるで鞠みたいにまんまるになってしまう。腰の所から二つに折れて、両膝の間へ頭を入れている。あんな芸当の出来る子供なら、この花瓶の中へ隠れることも、さして困難ではあるまい。ひょっとしたら、犯人は、丁度そんな子供があったので、この花瓶のトリックを考えついたのかもしれない。僕はそこへ気づいたもんだから、友達に軽業の非常に好きな男があるので、早速聞会わせて見ると、丁度鶯谷の近くに曲馬団がかかっていて、そこで同じ足芸もやっていることが分った」

そこまで聞くと、私は悟る所があった。この会話の初めの方で、諸戸が子供の客があると云ったのは、多分その曲馬団の少年軽業師であって、私がいつか鶯谷で諸戸を見たのは、彼がその子供の顔を見極める為に行っていたのだということである。

「で、僕はすぐその曲馬団を見物に行って見た所が、足芸の子供が、どうやら鎌倉の海岸にいた四人の内の一人らしく思われる。