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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

ハッキリした記憶がないので断定は出来ぬけれど、兎も角この子供を調べて見なければならないと思った。目的の子供が東京にいたと云うのは、あの四人の内で一人丈け東京から海水浴に来ていた子供のあったことと一致する訳ですからね。だが、うっかり手出しをしては、相手に要心させて、真の犯人を逃がして了う虞れがあるので、非常に迂遠な方法だけれど、僕は自分の職業を利用して、子供だけを外へつれ出すことを考えた。つまり、医学者として軽業師の子供の畸形的に発育した生理状態を調べるのだから、一晩借してくれと申込んだのです。それには、興行界に勢力のある親分を抱き込んだり、座主に多分のお礼をしたり、子供には例の好物のチョコレートを沢山買ってやる約束をしたり、仲々骨が折れたのですが」と諸戸は云いながら、窓際の小卓にのせてあった紙包みを開いて見せたが、その中にはチョコレートの美しい罐や紙函が三つも四つも這入っていた。「やっと今晩その目的を果して、軽業少年を単独でここへ引っぱって来ることが出来た。食堂にいるお客さんと云うのは、即ちその子供なんですよ。だがさっき来たばかりで、まだ何も尋ねていない。