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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
実に不思議な芸当であった。上から覗いて見ると、子供の黒い頭が、内側から栓の様に、花瓶の口一杯に見えている。
「うまいうまい。もういいよ。じゃあ御褒美を上げるから出ておいで」
出るのは、這入るよりも難しいと見えて、少し手間取った。頭と肩は難なく抜けたけれど、這入る時と同じ様に、足を折り曲げて、お尻を抜くのに、一番骨が折れた。友之助は花瓶を出てしまうと、一寸得意らしく微笑して、下へ下りたが、別に褒美を催促するでもなく、やっぱり押黙ったまま、ジロジロと私達の顔を眺めて突立っている。
「じゃ、これを上げるよ。構わないからおたべなさい」
諸戸がチョコレートの紙函に入ったのを渡すと、子供はそれを引ったくる様にして、無遠慮に蓋を開き、一箇の銀紙をはがして、口に抛り込んだ。そして、さもおいし相に、ペタペタ云わせながら、目では、諸戸の手に残っている、一番美しい罐入りの分を、残念そうに眺めている。彼の貰ったのが、粗末な紙函入りなのを、甚だ不服に思っているのだ。これらの様子によっても、チョコレートやその容器に対して、彼が誠に並々ならぬ魅力を感じていたことが分る。
諸戸は彼を膝の上にかけさせて、頭を撫でてやりながら、