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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
そいつを君は持って来たじゃあないか。あの時君が突きさしたのは、どんな人だったか覚えているかい。さあ答えて御覧」
「美しい姉やだったよ。おいら、その人の顔を忘れちゃいけないて、おどかされたんだ」
「感心感心、そういう風に答えるものだよ。それから、君はさっき鎌倉の海岸なんか行ったことがないと云ったけれど、あれは嘘だね。砂の中の伯父さんの胸へも、短刀をつき刺したんだね」
友之助は相変らず、たべることで夢中になっていて、この問に対しても無心に頷いたが、突然、何事かに気づいた体で、非常な恐怖の表情を示した。そして、いきなり、たべかけのチョコレートの函を投げ出すと、諸戸の膝をとびのこうとした。
「怖わがることはないよ。僕達も君の親方の仲間なんだから、本当のことを云ったって、大丈夫だよ」諸戸は慌ててそれを止めながら云った。
「親方じゃない、『お父つぁん』だぜ。お前も『お父つぁん』の仲間なんかい。おいら、『お父つぁん』が怖わくってしようがねえんだ。内密にしといとくれよ。ね」
「心配しないだって、大丈夫だよ。さあ、もう一つ丈けでいい、伯父さんの尋ねることに答えておくれ。その『お父つぁん』