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ことうのおに
孤島の鬼
江戸川 乱歩
「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页
でも、僕はハッキリ覚えてますから、今でも書くことが出来ますよ。ところで、不思議な一致というのは、初代さんの話では、その海の遥か向うの方に、牛の寝た形の陸地が見えていた相ですが、この雑記帳にも、土蔵の窓から海を見ると、向うに牛の寝た姿の岬があると書いてあるじゃありませんか。牛の寝た様な岬はどこにでもあるでしょうから、偶然の一致かも知れないけれど、海岸の荒れ果てた様子といい、海の形容と云い、この文章は、初代さんの話そっくりなんです。暗号文を隠した系図帳を初代さんが持っていた。それを盗もうとした賊とこの双児とは何か関係があるらしい。そして、初代さんも双児も、同じ様な牛の形の陸地を見たという。とすると、それは何となく同一の場所の様に思われるじゃありませんか」
この私の話の半ばから、諸戸はまるで幽霊にでも出逢った人みたいな、一種異様な恐怖の表情を示したが、私が言葉を切ると、ひどくせき込んだ調子で、その海岸の景色をここで描いて見せてくれと云った。そして、私が鉛筆と手帳を出して、ザッとその想像図を描くと、それを引たくる様にして、長い間画面に見入っていたが、やがて、フラフラと立上って、帰り支度をしながら、云った。