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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

君はまだ悟っていない様だが、この双児そのものに、世界中の誰もが考えなかった程の、恐ろしい秘密が伏在しているんだよ」

諸戸が何を考えているのか、ハッキリは分らなんだけれど、次々と現われて来る事実の奇怪さに、私は何か奥底の知れぬ不気味なものを感じないではいられなかった。諸戸は青い顔をして考え込んでいた。その様子が、彼自身の心の中を、深く深く覗き込んでいると云った感じであった。私も雑記帳を弄びながら、黙想に耽っていた。だが、そうしている内に、私はある驚くべき聯想にぶっつかって、ハッとして我に返った。

「諸戸さん。どうも妙ですよ。又一つ不思議な一致を思いつきましたよ。それはね。あなたにはまだ話さなかったか知らんが、初代さんがね、捨て子になる前の、二つか三つの時分の、夢の様な思出話をしたことがあるんです。何だか荒れ果てた淋しい海辺に、妙な古めかしい城みたいな邸があって、そこの断崖になった海岸で、初代さんが生れたばかりの赤ちゃんと遊んでいる景色なんです。そういう景色を夢の様に覚えているというのです。私はその時そこの景色を想像して絵に描いて初代さんに見せたところが、そっくりだというものですから、その絵を大切にしていたんですが、いつか深山木さんに見せて、そのまま忘れて来てしまったのです。