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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

「ウン、友之助かい。可哀想なはあの子でございよ、とうとうやられちゃった。ブルブルブルブル。だがね、兄貴、その日に友之助の足芸があったてえな、おまはんの思い違いだっせ。俺はこう見えても、物覚えがいいんだからな。あの日はね、友之助は小屋にいなかったのさ」

小人はどこの訛りとも分らない言葉で、併し仲々雄弁に喋った。

「一両賭けてもいい。俺は確かに見た」

「駄目駄目、兄貴そりゃ日が違うんだぜ。七月五日は、特別の訳があって、俺ぁちゃんと覚えているんだ」

「日が違うもんか。七月の第一日曜じゃないか。お前こそ日が違うんだろ」

「駄目駄目」

一寸法師は闇の中で、おどけた表情をしたらしかった。

「じゃあ、友之助は病気だったのかね」

「あの野郎、病気なんぞするものかね。親方の友達が来てね、どっかへ連れてかれたんだよ」

「親方って、お父つぁんのことだね。そうだろ」と北川氏は例の友之助の所謂「お父つぁん」をよく記憶していて、探りを入れたものである。

「エ、何だって?」一寸法師は突然、非常な恐怖を示した。「お前どうしてお父つぁんを知っている」

「知らなくってさ。八十ばかりの、腰の曲ったよぼよぼのお爺さんだろ。