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ことうのおに

孤島の鬼

江戸川 乱歩

「朝日」博文館、1929(昭和4)年1月号~1930(昭和5)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 181,795 字 · 359 页

青空文庫

考えて見ると、殺人犯人を父親に持った諸戸も因果であったが、恋人の敵が親しい友達の父親だと分り、しかも、その友達は私に親友以上の愛着と好意をよせている、この私の立場も実に異様なものであった。

「僕も一緒に連れて行って下さい。会社なんか首になったって、ちっとも構やしない。旅費は何とでもして都合しますから、連れて行って下さい」

私は咄嗟に思立って叫んだ。

「じゃ、君も僕の考えが間違っていないと思うのだね。だが、君は何の為に行こうというの」

諸戸は我身にかまけて、私の心持など推察する余裕は少しもなかった。

「あなたと同じ理由です。初代さんの敵を確める為です。それから、初代さんの身内を探出して系図帳を渡す為です」

「それで、若し初代さんの敵が僕の父親だと分ったら君はどうする積り?」

この問いに会って、私はハッと当惑した。だが、私は嘘を云うのは厭だ。思切って、本当の心持を打ちあけた。

「そうなれば、あなたともお別れです。そして……」

「古風な復讐がしたいとでも云うの?」

「ハッキリ考えている訳じゃないけれど、僕の今の心持では、そいつの肉を啖ってもあきたりないのです」

諸戸はそれを聞くと、黙り込んで、怖い目でじっと私を見つめていたが、ふっと表情がやわらぐと、突然ほがらかな調子になって云った。